さくらがおか



桜がとても美しかった。





花びら舞う丘を横切って、
憧れの人達に認めていただこうと、会場に向かった。


会場トイレで改めて身だしなみを確認し、

「よし。いっちゃいましょう!」

と、いつもの言葉で、自分にGOサインをかけてからいった。






採用担当の方は、とても綺麗な女の人だった。
キラキラした姿につい、うっとりしていると、

「頭に何かついているよ?」

と、指摘されてしまった。
焦った。心底焦った。
さっき身だしなみ確認したばっかなのに!(白目)
おろおろした。



「桜の花びらだ!」

にっこりしながら、淡いピンクの一枚を取っていただくその瞬間までは。



ーーーーーーー



胃腸炎にもノロにもインフルにも負けなかったこの私が、
ここ一週間、体調不良でへばっていた。

テンションは通常営業。
食欲も旺盛のまま。
しかし、
モリモリと食べれば、腹痛に苦しみトイレに駆け込む。
一昨々日の深夜は壮絶なお腹の痛みと吐き気に、
思わず救急車を呼んでしまいたくほど、
冷汗をかいて、顔を真っ白にして、呻きまくり、
散々心配をかけてしまった。

そんなここ最近はうまく眠れず、
面接当日の今朝は早朝5時寝をキメこんだ。
健康だけが唯一自慢できる取柄なのに、
小春日和漂う中、
お腹にカイロ、冬物のダッフルコートを着て会場に向かった。


なんという、余裕のない、無様な就活生なのだこと。



ーーーーーーー




ただ、わかりやすく、緊張していた。

自分が思っているより、
ずっと、
意外と、
すーぱー緊張しているのだと、
電車の窓にうつる自分の姿をみて思った。



「ステージは緊張を力に変えるものだよ!」

と、
かっこいい方がくださった言葉が心に残ってはいたけれど、
残念ながら、
幾度となく乗ったステージで、私がそれを成し遂げられたことは少なかったし、
最後には、大事なところの一音も、鳴らせずに、本番を向かえ、
いつも通りの「私の音」が並べられなくて、
私は、「私でない音」しか並べられなくて。

だから、結果、
次のステージがない、と発表されても
「悔しい」とも「悲しい」とも
思えなかった。
多分、良い結果をもらえていても、
「嬉しい」とも「やったぜ!」とも
思えなかったのだろう。


「悔しいと思えないことが、悔しい、」
なんて、
そんな虚しい気持ちはもう味わいたくない、とだけ強く思った。



ーーーーーーー



会場にゆく途中、
ぐるぐると、
今までの半生を振り返っては、自信を取り戻したり、
逆に、やっぱ無理かもおおおおおお、と嘆いたり。

とりあえずコンビニのトイレでも借りて、
テンションを整えて、一度落ち着こうと、
桜吹雪舞う渋谷を歩き回った。






「目が覚めるほど、美しい。とは、
たぶん、こうゆうことを言うんだなあ。」

と、感じたのは、
ふわふわ舞う、その小さな一枚一枚に見惚れ、
がちがちに固まっていたからだが解けていく感じがしたからだ。


そうしてだんだんと
お腹のカイロが あっちぃい!と感じ、
重たいダッフルコートも いらねぇえええ!と脱ぎ捨てた。

まさに、目が覚めて、我にかえれた瞬間だった。




ーーーーーーー



知らぬ間にお土産として頭にのせてきた花びらの件もあって、

それから受けた面接は、気持ちよく、素直に楽しむことができた。


これで駄目だったのならば、その時は自然に
「悔しい!!!!!」
と、叫べるのだろう。



ーーーーーーーー



桜は、もしかしたら自分のターニングポイント…
ターニングあいてむ…
の、ひとつなのかもしれない。



「モノクロの写真、私はこんなのを撮り続けたい!」

と、初めて思えたのは、
やっぱり、あの誰がなんと言おうと大切な桜舞う一枚だ。

あれが撮れていなかったら、
自分の撮れるモノクロ写真の楽しさを
まだまだ分かっていなかっただろうと感じる。
モノクロ、カラーの写真に対する考え方も、今とは違っていたかもしれないなあ。





だからね、桜のかみさま。
(そんなのいるのか、分かりませんけど)


どうか、この駄目駄目なわたくしめに、
憧れの人達から
「おいで。」と
許可をいただけるようなチカラを与えてくださいな。





や、

嘘です。





前言撤回。






神様の力なんて頼れない。
そんなものはおこがましいです。

私は、私の力で、
自分が「好きだ!」「力になりたい!」
と、思える人達に認められよう。




今そう思える人達に認めてもらえなかったらば、
その時は全力で悔しがって、
もっと好きだと、支えたいと、思える人達に出会おう。




そのために、今は
とにかく色々な人達に会いに行って、話を聞いて、
良いところを盗んで、悪いところを知って、

いつか思いが通じ合った時に、
少しでも盗んだものを生かせるよう
貯金しまくるしかない。



そんなつもりで
億万長者におれは、なる!キリッ!